ICOとは?
ICOは仮想通貨のテクノロジーを使った資金調達のことです。 ICOは「Initial Coin Offering(イニシャル・コイン・オファーリング)」の略です。
企業が証券取引市場に上場することをIPOと呼びますが、ICOはIPO、つまり「Initial Public Offering(イニシャル・パブリック・オファーリング)」と意味合いが似ているためICOと呼ぶようになりました。
ICOはとくに新規事業をおこなうため既存の資金調達手段では充分な資金を得られないスタートアップ、ベンチャー企業などが中心となって利用されています。IPOでは企業の株式を購入してもらうことで資金を調達しますが、ICOでは「トークン」と呼ばれる仮想通貨を使って発行することのできる「引換券」のようなものを購入してもらうことで資金を調達します。
一般的にトークンには開発されるサービスを利用する際に必要なものであることが多く、購入のインセンティブが用意されていることが普通です。
そしてトークンの中には仮想通貨取引所に「上場」して売買が容易になるケースもあり、そのICO以降トークンの価値が上がるとICO参加者は売却益を得ることが可能となります。
ICOの仕組み
ICOの仕組みについてもう少し詳しく説明します。ここでは新規事業のスマホゲーム「コインでGO」がICOした場合を例として説明します。
「コインでGO」を開発するためにトークンである「GOコイン」を百万枚発行しました。 GOコイン1枚あたり100円として、そのすべてをICOで販売すると1億円の資金調達が出来ます。
GOコインは完成したゲーム「コインでGO」で遊ぶために必要なものなので、このゲームがしたいがICOに参加しなかった人はすでにGOコインを持っている人に売ってもらう必要があります。
そして「コインでGO」が非常に人気が出て、GOコインを欲しがる人が増えるとGOコインの価値はどんどん伸びて、最初にICOで購入した人は大きな売却益を得ることができます。
このとき売買の流動性が高いほうが価値が高まりやすいため、仮想通貨取引所でGOコインは売買されることが一般的です。
ICOのメリット
実際にICOをおこなうトークン発行者と購入者の視点からICOのメリット・デメリットを紹介します。
発行者のメリット
最大のメリットは既存の資金調達手段よりも必要十分な資金を得られやすいことです。
まだ製品を開発する前の段階の事業者が取れる資金調達の手段は「銀行の融資」「ベンチャーキャピタルからの出資」「親戚・友人からの個人的な借金」などがあります。
その後製品がヒットし、会社が成長してはじめて市場から広く資金調達できる「IPO」という資金調達手段が見えてきます。 「ICO」の場合は製品開発前後の早い段階でIPOと同じように市場から広く資金調達できることがメリットになります。
そのほかのメリットは「製品開発前から製品のファンやコミュニティを得られる」ということです。これは購入者のメリットと重複しますので次の項目で説明します。
購入者のメリット
購入者側のメリットは大きくわけて3つあります。さきほど例の「コインでGO」で説明していきます。
1つ目はコインでGOをやりたい人はICOに参加すれば安くGOコインが手に入ることです。コインでGOの開発陣やストーリー、ゲーム設定などがイケてると感じたとして、実際にゲームが完成した後だとゲームの人気とともにGOコインの価格も上がってしまいます。
2つ目はコインでGO自体を応援できることです。コインでGOの開発内容を知り、ファンになったとき、製品が完成するようにGOコインを買って資金提供したり、知人に紹介して広めたりと活動することができます。
3つ目はICO後にコインの価値が上がって売却益を得ることです。 現状ではこれがICOに参加する中心的な理由となっています。一般的にはICOで資金調達に成功したトークンを、発行者は仮想通貨取引所へ上場させられるよう動きます。取引所に上場できれば売買がしやすくなるため、売買益を狙う人にとっては重要な要素になります。
ICOのリスクとは?
仮想通貨を使った新しい資金調達の手段であるICOにはメリットと同じくらいリスクがあります。
ビットコインなどの仮想通貨への投資と同じように考えることをできませんので注意が必要です。
短期の回収に向かない
ICOは最初のトークンの売り出し(トークンセール)から数年掛けて進捗していくのが一般的です。
トークンセール後、短くても3ヵ月前後、長ければ半年以上仮想通貨取引所への上場に時間がかかります。またトークンセール時点では開発はほぼ未着手の場合も多いため、実際にサービスとして使われるようになるのは1年以上先がほとんどです。
長期保有を前提とした投資スタイルとなるため、短期間で売買益を狙いたいという人には向かいのがICOです。
ICOは詐欺が多い
詐欺とはもっとも逮捕しやすく、もっとも立証が難しい犯罪と言われているようです。ICOでも明らかに詐欺目的のものや、詐欺かどうかはわからないが怪しいものなどを合わせると半数以上が詐欺プロジェクトだと言われています。
なぜICOには詐欺目的のプロジェクトが出てきてしまうでしょうか。理由の1つに法整備が進んでいないからというのがあります。
IPOなど証券取引市場に上場する場合は、主幹事となる証券会社が厳しくチェックをします。クラウドファンディングでも運営企業が明らかに詐欺目的だとわかるものは掲載許可を出しません。
しかしICOでは上記のような第三者のチェックがほとんど入りません。言い換えれば発行者が自由に決められることが多いのです。 例えばICOで得た資金をどう使うについて、トークンの購入者達に決定権や法的な拘束力のある命令をすることはできません。
これは極端な話、集めた資金をすべてボーナスとして配っても良いですし、社員総出で豪華旅行をしても違法ではありません。こういった事情から資金調達後に開発が滞ったり、発行者が姿をくらましたということも出てきています。
悪いICOの見分け方
良いICOの共通点はわかりませんが、悪いICOの共通点ははっきりしていますので下記に気をつけるとよいでしょう。
MLMや代理店で販売される
MLMはマルチレベルマーケティング、日本ではネットワークビジネスと呼ばれるマーケティングの形態のひとつです。代理店というのはトークンの発行者が特定の個人法人に依頼をしてトークンを販売してもらうものです。
どちらも共通しているのが「特定の人たちからしか購入できない」ということです。
ICOの特徴に世界中から誰でもICOに参加し、サービスや製品開発の初期投資家になれるという性質がありますが、特定の人からしか買えないというのはその魅力を減らしています。誰かからしか買えない、そういう話にはたいてい裏があるものです。
設立メンバーのSNSが見つからない
ICOでは何をやるかも重要ですが、それ以上に誰がやるかが大切です。それゆえ、経歴を詐称したりするプロジェクトも多く、例えば仮想通貨界隈の有名人の右腕だったと経歴に書いているがSNSも見つからずネット上の記事にもほとんど名前が見つからないということもあります。
ネット上でできる人物調査には限度がありますが、SNSでの発言などを調べることで信頼出来る人物なのかどうか、嘘の経歴ではないかをある程度判断することができます。
ICO実施中に総発行枚数が増えていく
ICOでは最初に発行するコインの枚数の上限を決めることが多いです。しかしプロジェクトの中にはトークンセールの途中で発行枚数の上限を引き上げていくものもあります。
1万枚中の1枚と10万枚中の1枚では割合が変わってしまって価値が目減りしたともいえます。 こういったことをするプロジェクトはただ資金を多く集めたいという意図が透けて見えるため信用が置けないICOプロジェクトと言えます。
トークンの値上がりを保証している
ICOをおこなうプロジェクトは新規事業であるがゆえに必ずしも成功するわけではありません。むしろほとんどは失敗するのではないでしょうか。
トークン自体に価値があるため仮想通貨取引所で売買することが主目的の人も多く、現状ではプロジェクトの成否を気にしない人もいます。
そんな人たちにとっては「このICOは上場する取引所がすでに決まっていて、かつ大手だから価格が急騰する」となれば美味しい話に聞こえるのでないでしょうか。
ほとんどのトークンが上場できる取引所以外では、トークンセールの段階で上場先が決まっていることは稀です。
良いICOについては「上場企業の子会社や関連会社がおこなうICO」「ベンチャーキャピタルなど既存の資金調達手段も利用している」「製品やサービスがすでに完成している」などでしょうか。
上記のようなICOは少なく、多くの人が有望だと感じると思いますので面白みはないかもしれません。
ICOの今後
ICOは詐欺プロジェクトも多く、とくに中国においてはICOのじつに9割以上が詐欺だったことからICO全面禁止となりました。韓国も一時的に全面禁止している期間もありました。
ICOの今後の課題は規制、つまりICOのルールづくりをどのように行っていくかです。 日本ではICOの全面禁止については慎重な姿勢を見せており、ICOという新しい資金調達手段を安心に利用できるようにしていく流れになっています。
仮想通貨取引所のzaifがICO専用のプラットフォーム「COMSA(コムサ)」を開発しており、行政機関と連携してICOの実施にむけて活動しています。
もし日本が世界に先駆けてICOの整備ができれば、それがグローバルスタンダードとなる可能性もありますので今後のICOのルールづくりにも注目したいところです。
まとめ
ICOは新しい資金調達手段でメリットも多くありますが、新しい分まだまだ整備されていないところもあり詐欺に使われたりもします。
仮想通貨全般に言えますが知識を身に付けることであからさまな詐欺ICOは回避可能です。応援したいと思うプロジェクトに投資し、さらに売買益を得られるようになるためにどんどん知識をアップデートしていきましょう。